- 東ティモール
- 経済自立支援事業
地域の特産品を活かした加工食品の開発・生産により、農村女性の収入の向上を目指します
プロジェクト背景
コーヒー生産者協同組合コカマウとの活動を通じ、農村地域の女性たちがおかれている社会的立場に意識が向くようになりました。女性たちは家事、育児に加えて農作業にも従事し、コーヒーの加工作業の現場では女性たちの姿を多く目にするにもかかわらず、議論や決定の場に出てくるのは男性ばかりです。また、家計への主な収入源となる年に一回のコーヒー収入は男性が受け取り、使い道を決めるのも男性です。現金が底をついて家計のやりくりが厳しくなる時期に備えて、鶏を飼っている、とこっそり教えてくれたのは女性たちでした。
女性たちが身近な農作物から安定した収入を得て家計の足しにすることができないか、と、2008年にコカマウ内で女性たちだけの活動を開始しました。市場にほとんど出回っていなかったそら豆を揚げて「ソラマメチップス」を作ったり、雑草としてしか認識されていなかったツボ草を乾燥させてハーブティにしたりと、国内外の専門家の知恵を借りて商品化に取り組みました。
その過程で、同じような活動に取り組む複数の女性グループが東ティモール国内にはあり、商品の品質改善、市場へのアクセス、良質な商品パッケージの入手といった共通の課題を抱えていることに気づきました。全国の女性グループが緩やかなネットワークを形成し、共通の課題解決に向けて協力し合うことができないか、と考え、2013年に「農村女性による経済活動支援」を開始しました。
プロジェクト内容
政府機関や他団体の支援によって食品加工を実践している東ティモール国内の女性グループを調査し、東ティモールの6県(ボボナロ県、リキサ県、アイレウ県、アイナロ県、コバリマ県、バウカウ県)にある23の女性グループを対象に選びました。各グループが「特産品」と自薦する商品の品質や製造原価を確認し、「作れるもの」から「売れるもの」へ品質を見直し、確実に女性たちの収入につながる価格設定をアドバイスしました。
2016年には女性たちが作る商品の統一ブランド「アロマ・ティモール」を立ち上げ、パッケージを一新して首都ディリでの販売を始めました。デザイナーが考案したロゴを冠した新パッケージは洗練され、従来の国産品とは大きく差をつけ、女性たちは「わたしたちにもできる」と大いに自信をつけました。
各県に一人ずつコーディネーターを選出し、ディリ市場からの発受注、各県での品質管理と集荷、ディリへの納品、商品代金の回収と支払いをネットワークとして一本化する体制をつくりました。JICA草の根技術協力事業が終了した2018年以降も、このネットワークが生産、流通、販売を継続しています。
2021年にはディリ市内にアンテナショップ「アロマ・ティモール・カフェ」をオープンさせ、コーヒー事業で生産する良質なコーヒーとともに、国産品をディリの消費者に楽しんでもらえる場を提供しています。
この事業は、JICA草の根技術協力、Market Development Facility(オーストラリア)、カモインス言語・国際協力機構(ポルトガル)の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。
現地からの声
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ディリ・マーケティング担当 マルタ・グスマオさん
首都ディリでのマーケティングを担当し、グループへの商品発注から品質確認、ラベリング、スーパーマーケット等への卸までを行ってきました。安定しない品質、改善の必要なパッケージング、雨期に入って公共交通機関を使って運ばれて来た商品が濡れている等々、日々課題に直面しています。商品を売って安定した収入を得ることは本当に難しく、今後はプロモーションの仕方、売り方なども工夫しながら、売れる商品とそうでないものを分析してグループの生産量と収益に反映させられるようにしたいです。
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ドミンガスさん(アイナロ県女性グループ)
5年ほどいちごの栽培をしていますが、今年は乾季に降雨に見舞われ苗が根腐れしてしまい、気候変動の影響を強く感じます。私たちより先に菊の栽培を始めたアイレウ県のグループを訪問し、電灯照明やフラワーネットを使用した茎を長く育てる手法などを見てとても刺激となりました。この事業で切り花の栽培に挑戦できることにワクワクしています。グループでの栽培管理は各メンバーので事情も異なるので なかなか大変ですが、みんなでおしゃべりしながらの農作業を楽しんでいます。