パレスチナ・ガザ緊急支援のご報告:羊農家70世帯に支援を届けました!
- コラム
2023年10月7日から2か月が経過しましたが、ガザ地区の人道危機は悪化の一途をたどっています。11月以降、ガザで緊急支援を行っている国際機関やNGOは繰り返し「ガザ地区では全市民が被災しており、すべての人に緊急の支援が必要である」と訴えています。
12月18日現在、ガザでの空爆などによる犠牲者は19,453人、全住民約220万人のうち190万人が住まいを追われ、国内避難民となっています。国連施設や公共施設、親戚の家などに身を寄せあうか、あるいは路上に簡単なテントを立てての避難生活をしいられ、劣悪な環境によって命の危機にさらされる人たちが激増しています。
パルシックは、ガザ地区のハンユニス県で畜産支援事業を実施しています。この戦争が始まってから、ガザのスタッフたちは自身も大変な状況にありながらも、なんとか羊農家70世帯の安否確認を続けてきました。
11月25日時点で参加する羊農家全世帯の安全を確認しました。このうち数世帯は、空爆の被害にあいながらも、諦めずに羊を連れて避難していました。農家さんからは「食料品や生活必需品の値段が上がってしまい、買うことができず困窮している」、「羊の飼料代も高騰していて羊に餌を与えることができない。このままでは私たちだけでなく羊の命が危ない」といった声が多く届きました。(その後、残念ながら十分な飼料を与えることができずに餓死や病死した羊もいます。)
このような声を受け、パルシックは一時休戦中であった11月20日から25日にかけて、羊農家70世帯に一世帯あたり750シェケル(約3万円)を皆さまからいただいたご寄付で届けました*。
*ガザスタッフによる羊農家からの聞き取り調査および国連からの報告によると、750シェケルは、10月7日以前であればガザ地区での最低限の生活に必要な1ヶ月分の生活費に相当するとされていた金額です。ただし、物価の高騰に伴い配付時点では2週間分しか賄えない状況になっています。
プロジェクトマネージャーのサハルがアル・マワーシ村の羊農家を訪問して現金を渡す様子
畜産専門家のマフムードがアルカララ村の農家を訪問して現金を渡した様子。マフムードは空爆が続き通信状況が悪いなかでも羊農家の皆さんや羊の心配をして電話相談に応じています
複数世帯が近くに住んでいるアルマナーラ村の羊農家には、配付場所を決めて受け取りに来てもらいました
現金を受け取り「日本の皆さんに心から感謝しています」と繰り返す羊農家
多くの羊農家には子どもがたくさんおり、現金給付のおかげで子どもたちのために今日、明日の食べるものを買えると安堵されていました
支援を受け取った羊農家は、小麦粉などの食糧、生活必需品、羊の飼料、それらを買いに行くための交通費として使いたいと言っていました。また、「物価が上がり食料の購入がとても大変でしたので本当に感謝します」、「日本の皆さまと繋がっている気がします。私たちのことを気にかけてご寄付いただき心からのお礼を伝えてください」といった声もたくさんいただきました。
「日本の皆さまからの温かいご支援に心から感謝します」と繰り返すアルマナーラ村の女性世帯主の羊農家モナさん(左)とサハル(右)
ガザ地区はこの戦争以前からイスラエルによる16年間に渡る軍事封鎖下にあり、人や物の移動が厳しく制限されてきました。ガザ地区内で農業や漁業は営まれているものの、食料や生活に必要なものの多くは、イスラエルにより管理されている検問所を通らなければガザ地区内には入ってこない状況でした。そして10月7日以降、14日間にわたって全ての検問所が閉ざされ、21日からようやく南部のラファ検問所を通して人道支援物資がガザ地区内に入り始めましたが、必要とされる物資に比べて非常に限られた量です。
当初パルシックは、緊急支援として食料品や医薬品の配付に向けて準備を進めていました。しかし、配付物資の調達や一時保管が容易ではなく、配付時の安全確保も難しくなっていること、またガザスタッフから届く日々の状況報告から、一刻も早くできる支援を優先して現金給付に切り替えました。
皆さまのご寄付により各世帯がそれぞれ必要とするものを見つけたときすぐに購入できるという、現在のガザにおいてより効果的な支援を届けることができました。ご支援いただきました皆さまに深く感謝申し上げます。
配付後も戦闘は激化しており、休戦後は空爆に加えて南部へも地上侵攻が行われ、ガザ地区は文字通り安全な場所がどこにもない状態です。現在、羊農家70世帯の安否確認はできていません。パルシックは即時停戦を訴えるとともに、一人でも多くの命を繋げるために緊急支援を続けていきます。今後とも皆さまからのご支援をなにとぞよろしくお願い申し上げます。
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