ガザ緊急支援:食料、衣料品、テント用資材の配付
- コラム
2023年10月7日の戦争勃発から半年が経ちました。ガザ地区でのイスラエル軍による攻撃は激しさを増すばかりで、ガザでの死者数は3万人を超えています。そして、ガザ地区内では攻撃による直接的な被害だけではなく、インフラや医療施設の破壊、またイスラエルによってガザ内に入る物資が極端に制限されている状況が続いているため、清潔な水や食料の圧倒的な不足による感染症の蔓延、深刻な飢餓の危機が拡大しています。
パルシックはガザ地区中南部で避難生活を送っている国内避難民を対象に、食料、衣料品、仮設テント資材の配付を実施しました。
食料バスケットの配付
2月に実施したハン・ユニス県に続き(前回の報告はこちら)、3月初めにラファ県、3月末から4月初めにかけてはデイル・アル・バラ県で、それぞれ900世帯を対象に食料バスケットを配付しました。
内容は乾物や缶詰など保存ができる食料と、新鮮な野菜(トマト、じゃがいも、きゅうりなど)です。このように配付するバスケットには、普段人びとが食べ慣れていて、必要な栄養の摂取を助ける食料を入れていますが、圧倒的に物資が不足しているガザ地区内で調達しているため、配付時期と場所によって中身が異なることがあります。
たとえば、大規模に特定の物資がガザ内に入ってくると、その特定の物資の価格は一気に下がります。そのような食料は避難している人たちも自分で購入できる可能性が高いので、自分たちで手に入れることが難しい食料をバスケットに入れるなど、ガザ地区内で日々変動する状況に対応するよう努めています。
配付するバスケットの中身はたくさんの家族が長期間食べられるほど多くはなく、ガザ地区内で調達できる食品の種類や品質は限られていますが、できるだけ美味しいもの、品質のよいものを提供できるように、配付前にパルシックのガザスタッフや提携団体スタッフが中身の品質確認をしています。
配付前の確認作業の様子。机の上には、手前からチーズ、デーツ、砕いたレンズ豆、ホールレンズ豆、米、パスタ、調理用油などが並んでいます
デイル・アル・バラ県での食料バスケット配付の様子。場所によって避難状況が異なるので、配付方法もそれぞれの状況に合わせて混乱や混雑を防ぐ工夫をしています。デイル・アル・バラ県では、対象世帯に事前にチケットを配付して、食料バスケットと交換しました。写真中央でスタッフがチケットを確認しています
また、パレスチナでは今年は3月11日からイスラム教徒にとっての断食月ラマダンが始まっています。ラマダン期間中の人びとは、日の出から日没まで食事を取りません。日没後の断食明けの食事には肉などを料理して、家族で集まって食事を楽しみます。この断食明けの食事をイフタールと呼びます。
しかし、現在ガザでは生存に必要な最低限の食料を確保することさえ困難な状況が続き、貧血などの体調不良を抱える人が増えています。もちろん、いつも通りのイフタールを準備することはできません。
そこで、皆さまからお寄せいただいたご寄付で、4月初旬に冷凍の鶏肉、米、調理用油や新鮮な野菜を入れたイフタールセットをデイル・アル・バラ県の180世帯に提供しました。特に鶏肉の調達は容易ではありませんでしたが、受け取った人びとから「4カ月ぶりにお肉を食べることができました」と喜びの声をいただきました。
イフタールセットを受け取ったアリさん。戦争以前は日雇い労働で収入を得ていましたが、現在は仕事を失っています。ガザ中部の自宅は空爆の被害を受け、家族8人で避難生活を続けています。家族が食べる食料を確保することも容易ではなく、イフタールセットを受け取り安堵していました
受け取ったイフタールセットを自宅で並べて、「日本の皆さんありがとう!」と喜びのを届けてくれました。左から油、米、じゃがいも、トマト、レモン、りんご、きゅうり、青唐辛子、鶏肉が並んでいます。お肉を食べることが待ち遠しい様子です。りんごはガザ地区内では生産されていませんが、商業用トラックでガザ外から搬入されており、今回配付ができました
衣料品(越冬用)の配付
避難民のなかには、パルシックのガザスタッフのタグリードのように(タグリードからの手紙)、一度家を離れても再び家に戻ることができた人たちもいますが、着の身着のまま避難した後、家が攻撃されて全壊、または家の周辺が危険地帯となって、身の回りの物を取りに行くことができなくなっている人たちがたくさんいます。
そこで、3月初旬にハン・ユニス県とデイル・アル・バラ県でそれぞれ家に戻ることが困難な避難民450世帯を対象に、主に防寒用の衣料品を配付しました。配付内容は子ども用のジャケット、大人用のウール素材のシャツやジーンズに加えて、女性がお祈りの際に着る服などのセットです。
お祈り用の服は、頭から足首まですっぽり体を覆う服で、女性は1日5回のお祈りの時に着用します。ガザでは今、普段からこのお祈り用の服を着ている女性が多くなっています。避難テントでの生活はプライバシーが全くない状況であること、また空爆などの攻撃にあったとしても、手や足を覆う部分が多い服を着ていることで、最後の尊厳を守りたいという思いがあるからです。
衣料品の配付場所に来た母娘。配付の中身を見て喜んでくれました
仮設テントの補強用ナイロンシートの配付
ガザ地区全人口220万人のうち、75%にあたる170万人が国内避難民となっています。避難先は、学校などの公共の施設や国連施設、親せきや知人宅、もしくは仮設のテントを立てて雨風をしのいでいる人たちもたくさんいます。避難先に因らず、避難している人たちは非常に厳しい生活を強いられています。
そこで3月から、仮設テントに暮らす人びとにテントの補強に使えるナイロンシートの配付を開始しました。配付を始めたころのガザはまだ寒く、補強用シートで雨風をしのぐことができ、また4月に入ってからは気温も上がり、今は強い日差しを防ぐのに役に立つと喜ばれています。
全部で120枚のシートを配付する予定で、4月8日までに、デイル・アル・バラ県の70世帯に配付しました。引き続きラファ県での配付の準備を進めています。
テント補強用ナイロンシートの配付の様子。配付前にガザスタッフが一軒一軒仮設テントを訪問して状況の確認を行いました。配付後も、資材をうまく利用できているかどうかのフォローアップも行っています
写真の家族はナイロンシートの配付前はありあわせの袋や布、薄いプラスチックシートでテントを建てていました。今回配付したナイロンシートは耐久性があり強い雨風でも破れません。今後、さらに避難をする場合でも折りたたんで持ち運べるため、長く利用できます
受け取ったナイロンシートでテントを完成させました(写真右上の段ボールで作ったPARCICのロゴ型はテントにロゴをスプレーするためのものです)。ナイロンシートは補強用として使用することを想定して準備をしましたが、補強以前に雨風をしのげるテントさえ設置できていない人たちも多くいます
停戦合意に向けた関係国間の交渉や国際社会からの働きかけが続いていますが、はっきりとした停戦の兆しをみることができないまま、半年が過ぎました。
パルシックは停戦に向けて市民社会の一員として声を上げ続けると同時に、未曽有の人道危機に直面しているガザの人びとに寄り添った緊急支援を続けていきます。
(パレスチナ事務所)
*この事業はジャパンプラットフォームからの助成および皆さまからのご寄付により実施しています。