ガザ緊急支援:ラファ侵攻後にできた避難民キャンプに水タンクを設置しました
- コラム
イスラエル軍が陸・海・空から無差別攻撃を続けるガザ地区は、最高気温が44度を記録した4月下旬から猛暑に見舞われています。強い日差しが照り付ける中、仮設テントで暮らす人びとは、特に過酷な状況に置かれています。
5月上旬、イスラエル軍が南部ラファ県への軍事侵攻を開始して以降、ラファ県に避難していた約140万人は、再度の退避を強いられました。多くの人が南部ハンユニス県や中部デイル・アル・バラ県に避難し、海岸沿いから街の中心部まで、いたるところに新たな避難キャンプができて、国際NGOや国連の支援が全く届いていないところもありました。
中部デイル・アル・バラ県ヌセイラット地区の海岸沿い。ラファ侵攻以降、避難をしてきた人びとが浜辺から沖に出る桟橋の上まで、所狭しと仮設テントを建てていました
海岸沿いに仮設テントを建てた人びとは、塩分の高い海水を生活用水として使用しています。身体を洗うと海水が皮膚にしみ、洗濯しても塩分が服に残るため、けっして生活用水に適しているわけではありませんが、それでもまだ何とか水にありつけています。
他方、海岸から少し離れた場所や、街の中心部にある避難キャンプでは、水道も井戸もなく、人びとは生活用水や飲料水の確保に困り果てていました。この状況を聞きつけたパルシックのガザスタッフは、人びとの命を繋ぐために一刻も早く飲料水を提供しようと、5月上旬から水タンクの設置をはじめました。
ガザスタッフのうち4人が現在避難生活を送っているデイル・アル・バラ県で、各避難キャンプのリーダーとなっているコミュニティメンバーを訪問し、点在するキャンプの場所、居住する世帯数、支援状況などを確認しました。支援が届いていないキャンプを特定した後に、水タンクの設置場所や設置後の管理責任者、給水方法などについて、コミュニティメンバーと迅速かつ入念に話し合いを進めました。
キャンプのコミュニティメンバーとパルシックのガザスタッフがミーティングを行っている様子
キャンプの訪問と併行して、水タンクの調達も進めました。ガザには限られた数ではありますが、中古の水タンクを売っている業者がいます。しかし、最初に調達できた水タンクは、パレスチナで多く食べられるピクルスを漬けるために使われていたもので、何度水洗いをしてもピクルスの臭いが取れず、やむなく別のタンクに取り換えることにしました。
パレスチナの人びとはピクルスを好んで食べます。戦争以前はこのタンクいっぱいにピクスルを漬けていました
この度、皆さまからの温かいご支援により、飲料水用の水タンク計26個を、デイル・アル・バラ県の避難民キャンプ8ケ所に設置することができました。飲料水が届くのを今か今かと待ちわびていたキャンプの人びとは、水タンクの設置と同時に急いで水汲み用の容器を持って集まってきました。キャンプのコミュニティメンバーが混乱を避けるために準備した番号札を受け取って、自分の順番が回ってきたら水を入れていきました。
水タンクへの給水は、これまで食料バスケットの配付(詳しくはこちら)などで共にガザで活動してきた提携団体の協力を得たり、給水会社から購入したりしました。現在は他団体のご厚意で無料の給水活動も継続しています。
水の確保が極めて困難な中、届けられた水を目の前に子どもたちは興奮がおさまらず、水をその場で飲んでのどを潤したり、家族のために自宅に持って帰ったりしていました。
それぞれ水汲み容器やペットボトルを持って水を入れる順番を待つ子どもたち。後ろの大きな白いタンク2つが設置したばかりの水タンク
水タンクの下部に取り付けられた蛇口をひねると水が出て、水汲み容器に水を入れることができます
水が手に入って喜び全開の男の子。水タンクが設置されるまでは、水を求めて何キロも歩く必要がありました
喜びからグッドポーズをしてくれた男性。子どもたちも割り込みせずに並んで待っています
写真の奥に写っているのは、水タンクに給水に来たトラック。水タンクは盗難防止のため網や柵などで覆い、柱にも結び付けてしっかりと固定しました
夏の本格的な暑さが続く中、熱中症や皮膚病、感染症のリスクもさらに高まっています。猛暑や劣悪な衛生環境も重なって、人びとの命が深刻な危機にさらされています。
パルシックは、皆さまからのご寄付で、7月24日現在、水汲み用の容器を1,420世帯に配付する活動も実施しております。
今後とも現場のニーズに応じた緊急支援を続けていきますので、温かいご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
水タンクの準備ができ、キャンプに運搬する前に記念撮影。左からシャディ、アブダッラー、マフムード。撮影はサハル
(パレスチナ事務所)
*この事業は、皆さまからのご寄付により実施しています。