グルメレポート5 隠れた逸品『サメ肉』料理
- コラム
1. これがサメ肉の切り身。生肉は臭くてあまりおいしそうではありません。
2. ウコン、ニンニクはつぶして、バジル、ライムの葉はそのまま。小さく切ったサメ肉に胡椒と一緒に揉み込みます。
3. レモングラスは根元付近の白い部分を包丁の背で叩いてつぶし、このように縛って鍋に放り込みます。
4. 炊き上げること20分ほど…
5. できあがり!
いよいよ海の幸です。東ティモールは周りを海に囲まれた小さな島なので魚をよく食べるだろう、と思っていたのにあまり見かけない、という声を聞きます。わたしも事務所暮らしで外食の多かった独身時代はそう思っていました。が、東ティモールの人たちは魚が好きです(魚を食べてはいけないという風習のあるオエクシ地域を別として)。冷蔵設備や流通網が限られた地域にしかないため広く流通せず、たいていは獲れた地域で消費されます。ティモール島南海岸では大消費地ディリへのアクセスが悪く、獲った魚が売れないため干し魚にして保存食としています。魚ばっかりで飽きた、という理由で魚が嫌いな人はいるかもしれません。
わたしの相方は自称“海の男”で、海大好き釣り大好きお魚大好き。おかげで食卓に魚類が出ることが多く、中には変わったものも。今回ご紹介するのは『サメ(tubaraun)』。サメ肉を見つけると、うちの親戚たちは電話をかけあって親戚中分確保します。よほど人気のティモール料理なのかと思っていたら、サメ肉の調理方法を知っている人は限られているのだとか。他の魚と同じようにそのまま揚げると皮が砂のようにじゃりじゃりして肉の臭みも強いため、食べるのは好きだけど料理の仕方を知らないからなぁ・・・という人が多いのだそうです。
サメ肉は大きさによりますが、大抵切り身で1枚2ドル程度で売られています。皮をきれいにはがして適当な大きさに切り、ウコン、ニンニク、バジル、レモン グラス、ライム果汁、ライムの葉と一緒に炊きます。ウコンの黄色が染み渡り、これでもか、というほどの香草類ですっかり臭みも消えたサメ肉は、骨もバリバリと食べられる絶品。
サメはディリ港周辺でも獲れます。1人目の子どもが生まれてしばらくして近所の漁師と釣りに出た相方が、サメを釣り上げました。乗っていたアウトリガーの釣り船と同じくらい、体長2メートル胴体30センチほどの大物だったそうですが、初めての子育てでそれどころではなかったわたしは、相方が当時の上司を電話で呼び出してサメをつまみに酒盛りしていたことくらいしか覚えていません。しかしあらためて(このグルメレポートのために)聞いてみると、小さな釣り船 の上でかなりの格闘の後に仕留めてきたようです。それだけ釣るのが大変でこんなに美味しいのに、あまり高くは売れないという隠れた逸品。すでに何度も食べさせてもらっているわたしはかなりラッキーなのかもしれません。
ディリの対岸にアタウロ島という島があり、この島の漁師たちは銛を片手に素潜りで漁をすることで有名です。そのために酒もたばこも禁止、というまさに“海の男”な彼らですが、彼らはサメを“ご先祖さま”と恐れているのだとか。漁に出る前にケンカをしたり、なにか後ろ暗いことがあって海に入るとご先祖さまに襲われると信じているのだそうです。だから漁に出る前にはきちんと仲直りをする。ご先祖さまさまですね。
(東ティモール事務所 伊藤淳子)