東ティモール 美味しいコーヒーに出会う旅2023 参加者たちの感想文(2/3)
- コラム
2023年8月に開催された「東ティモール 美味しいコーヒーに出会う旅」に参加した皆さんから旅の感想をいただきました。
〈ヒトの原点「大家族」に包まれることができた旅〉 東ティモールのコーヒー農家を訪ねる
桃井奉彦さん
今までに様々なスタデイーツアーに参加してきましたが、このツアーで体験した感動が私には最高でした。
日本をたってから四日目に到着したクロロの集落。自分たちのベットを開けてくれたコーヒー農家のホストが、夜私たちを家族団らんの場に招いてくれました。電灯もなく家具類もほとんど見えないガランとした土間の一角の三個の石に鍋をのせたカマド。そのカマドの火の明かりの中で、赤ちゃんや子どもまで含めた三世代家族15人ほどと3匹の犬や2~3羽の鶏まで集まった大家族の団らんの中に、私たちのためにイスを用意してくれたのです。
テトゥン語もポルトガル語も全く、の私たちには会話らしいこともできませんでしたが、天井近くが煙だらけで薄明かりに照らされて、ほんわかとした雰囲気にすっぽりと包まれてとっても気持ちの良いひとときでした。
私は、現代まで含めた人類の歴史に関心を持っています。私たち現代人の心身のメカニズムは決して文明生活用に作られているわけではなく、600~700万年の人類史のほとんどを占める狩猟採集生活用のまんまになっている(生理人類学)ということです。
だとすると、現代の便利な道具に囲まれた私たちの心身のメカニズムは、過度に使われたり、ほとんど使われなかったり、変な使い方をされたり・・・。そのために私たちの心身が調子を崩したり壊されたり(生活習慣病)しているわけです。
また、労苦の多い大昔の心身の使い方をしていると、脳内モルヒネと呼ばれる物質が分泌されてうれしく楽しくなってくるというメカニズム(報酬系)も備えています。このことがヒトの「生きる喜び」の中心にあるのではないでしょうか。
ところが今、そのような心身の使い方をほとんどしなくなった私たちには、これらの楽しさはグンと少なくなってしまい、それに加えて便利なツールを使うためにいくつかの心身のメカニズムを組み合わせたりと、不自然に使ったり無理をしたりでストレスだらけなのです。
一つ救いもあります。今でも心身のメカニズムをそのまんまに使うと、例えば、森の中を歩いたり、熟した果物やイモなどを見つけて取って食べる、・・・などすると脳内にモルヒネが分泌されて楽しくなってくるのです。このような行動を意識して増やしていけば、それが生きる喜びとなっていくでしょう。
直立二足歩行を始めたことによって人になってきたと言われます。その時に骨盤に大きな変化が起こり女性の産道が狭くなってかなりの未熟児のままで産むしかなくなり、すごい手間と時間のかかる育児となってきたのです。このことを解決する方法として、ヒトには強い夫婦愛と家族の助け合いが備わってきたようです。
このように誕生したヒトは長い狩猟採集生活の時代、広大な森の中で数十人規模の集落を作って、周辺の森から食料を得、非常に厳しい生活環境で三世代家族が協力し合いながら生命を繋いできたのでしょう。
私はこのような思いを持ちながら今回の参加となりました。冒頭の家族団らんの体験では、予期していなかっただけにいっそう強い驚きと感動に引き込まれてしまったのです。
私たちは「便利」を求め続けてきた結果、必然的に家族を捨て去って、大家族から核家族へ、そして家族崩壊して個食の時代にもなってきています。これらは両立できないものなのでしょうか!?
クロロの人びとの生活もこれから少しずつ便利が入ってきて、何年かすればあの家族団らんにも様々な変化が起こってくるでしょう。私がこのクロロの家族団らんが続いてほしいと願うことは、裏を返せば、過酷な生活がこれからも続くようにと願うことなのかもしれません。
でもせめてクロロの人たちに、私たちが見失ってしまった宝物のような家族団らんと厳しい生活に、ぜひ誇りをもって生きていってほしいと思っております。
本当に素晴らしい経験を!ありがとうございました。
クロロでの歓迎の儀式
ツアー感想文
磯野昌子さん
本当に参加してよかったです。ツアーを企画準備し、支えて下さったパルシックの皆様に心より感謝申し上げます。私はこれまで多くのNGOのスタディツアーに参加してきましたが、パルシックの東ティモールツアーは何年もの積み重ねによって洗練され完成度の高いものになっていることがよくわかりました。適度な事前情報、東ティモールの歴史や都会の生活を知ってから村に入り、2泊の民泊、村人との交流からコーヒーの収穫だけでなく、村で焙煎して挽いて、工場で製品化して、アロマティモールでカッピング体験して飲めるまでのすべてのプロセスを体験できることなど、短期間にすべてが網羅されていました。しかも、詰め込みすぎず、臨機応変にスケジュールを変更できるゆとりがありました。私自身は途中で体調を崩してしまい皆様にご迷惑をおかけしましたが、スタッフをはじめ参加者の皆さんに助けられて、最後まで無事に楽しく過ごすことができました。
参加メンバーは個性豊かで互いに相手らしさを尊重できる素晴らしい方ばかりで、メンバーから学ぶことも多くありました。特に桃井さんご夫婦が参加してくださったことは、メンバーを一つの家族のように感じさせてくれました。受け入れ側としてはご高齢であることでお気を使われたことと思いますが、受け入れて下さったことに感謝申し上げます。
ツアー全体を通して、強くて優しい東ティモールとそこに住む人びとが大好きになりました。時間と経済力が許せば、今度は他の村にも行ってみたいです。
コーヒー豆を焙煎(中華鍋強火)したあと、お古の水道管を利用して皮をとりのぞき(豪快)、ふるいで皮と豆をより分ける(写真)。名人技の作業
ツアー感想文
清水美雪さん
今回、いつも飲んでいる東ティモールコーヒーの農園ツアーがあると聞いて参加しました。コーヒー事業を始めたころから、どこで、誰が、どうやってコーヒーが作られるのかを知りたく、農園に行くということが一つの夢でありました。
ツアーを通して、コーヒー農園の現場、プロセス、生産者と直接関わることで、コーヒーに対する知識が大変深まりました。
また、現地ではテトゥン語がわからないにも関わらず、集落の方からの親切なおもてなしを受け、パルシックの皆様が昔から築いてきた信頼関係を肌で感じることができました。
この経験やこのツアーで感じたことを事業を通じて多くの人に伝えていきたいです。
コーヒー豆の収穫体験