特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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シリアは夏野菜の収獲時期を迎えました

  • 活動レポート

こんにちは、レバノン事務所のアンソニーです。レバノンもシリアも 夏の真っ只中で、両国とも非常に暑い日が続いています。夏野菜の初収穫が完了し、今年のプロジェクトもいよいよ終わりに近づいています。それでは、今年の農業事業における課題と成果を一緒に振り返ってみましょう。

シリアの今

2023年1月から今年の1月の1年間で、現地通貨のシリアポンドが米ドルに対して価値を大幅に失いました。国連によると4人家族に必要な最低生活費は約650万シリアポンド(約450米ドル)と推定されており、この額はほとんどのシリア人にとって稼ぐことが難しい額です。

さらに、国連全体でシリアに対する支援資金が50%削減され、多くの脆弱なシリア人が援助を受けられなくなっています。世界銀行によると、シリア全人口の約69%が貧困状態にあり、約27%が極度の貧困状態にあります。

特に、極度の貧困状態にある人びとのおよそ半数はアレッポ県、デリゾール県、そして私たちパルシックが現在活動を行っているハマー県に住んでいます。

また、シリア国内の経済状況の悪化に加えて、西アジア地域の緊張は依然として続いており、北西部の国境地帯、第二の都市アレッポ、首都ダマスカス近郊では爆撃が今もなお続いています。また、シリア周辺地域での緊張状態も今後も継続すると予想されます。

さらに、近年シリアでは気候変動や自然災害の影響も大きく受けています。今年、シリア北部地域は記録的な干ばつに見舞われ、中央部のハマー県やホムス県でも同様に水不足が発生しました。例年にない降雨サイクルが小麦の生育に影響を与え、小麦の収穫量が減少しました。他にも、先月8月にシリアでマグニチュード5の地震が発生し、大きな被害はありませんでしたが、人びとは昨年2月の北部地震で体験した恐怖を思い出しました。

長期にわたる経済危機と紛争のため、今でも多くのシリア人が国内避難生活を続けています。さらに治安の悪化により犯罪や恐喝の発生率もシリア国内で上昇傾向にあります。現状に対する不満から、南部のスウェイダや北部のアレッポで抗議活動も散発的に発生しています。

私たちの事業-農業生産活動-

食糧安全保障は、国内生産を支える重要な基盤となります。パルシックの事業では、経済的困難に直面しているシリア人農家を支援し、土地の開拓から収穫までをサポートしています。主に、「小麦」と「夏野菜」という年に二回の農業生産を実施しており、地元の食糧生産を支えています。

私たちが現在行っている事業は、去年の秋開始しました。小麦は11月頃に植えられ、そして6月から7月の初夏にかけて収穫されました。収穫された小麦は主に農地の近隣地域で販売され、一部は家庭消費用に保存されています。今年の小麦生産量は、各シリア人農家が約4ドノム4,000平方メートル)から約1.6トンの小麦を収穫しました。

また、春から初夏にかけて、夏野菜の植え付けを行いました。事業地ではナスが最も有名な産品であるため、多くの農家がナス栽培を選びました。ナスの他にも、インゲン豆、キュウリ、トマトなどが栽培されました。9月現在の今まさに、これらの夏野菜の収穫を行っているところです。

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春の訪れと緑の小麦畑

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黄金の穂が収穫がもうすぐと告げています

課題

事業を実施していく中で、多くの課題に直面してきましたが、特に天候や気候変動に関わるものが多かったです。先の冬は例年通り、良好な降雨量に恵まれ、小麦の収穫量はドノムあたり600kgを超えると予想されていました。ところが、春の終わりに例年にない降雨が発生し、多くの作物が被害を受けました。小麦の生育でこの温かい時期の降雨は、カビや雑菌の繁殖の原因となるためとても深刻です。さらに、太陽の熱によって種子が蒸されて発芽しなくなることもありました。

しかし、農業専門家のサポートのおかげで、収穫量は1ドノムあたり平均400kgを達成することが出来ました。予想よりも少ない生産量でしたが、例年にない悪天候を考慮すると良い結果となりました。

一方、夏野菜栽培には適切で定期的な水やりが不可欠です。シリア全土で続いている酷暑と干ばつのため、夏野菜の栽培は困難な状況で行われました。しかし、施肥や、日差しが弱い早朝や夕方に水やりをする方法をとるなどして、農家が厳しい環境の中でも今年も無事に収穫を始めることが出来ました

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パルシックのスタッフ(右)と農家さんはいつも連携しています

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収穫は手で行います

達成

度重なる課題にもかかわらず、多くの農家がパルシックの事業を通して生活の状況を大きく改善しています。

事業を持続的に継続していくために、今年の事業で得られた収入を次にどのように使うかを計画することも、この事業で農家の人たちと話し合ってきました。事業で得られる農業資材の量以上の夏野菜の種や苗を購入した農家もいますし、また羊や牛といった家畜に投資することを選んだ農家もいます。さらに、多くの農家は事業を通して得た収入で借金を返済し、安定した生活を取り戻しつつあります。

夏野菜の収穫は来月10月まで続く見込みです。小麦と夏野菜の生産活動は、農家に収入をもたらすだけでなく、家庭の食費を抑えることにもつながりました。ほとんどの農家は、保存した食糧を親戚や家族と分け合っているそうです。

この事業で支援することができた農家は、今後も農作物の生産活動を続け、他の興味のある分野にも事業を拡大していきたいと話しています。

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多くの世帯が将来への投資として家畜を購入しました

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収穫したトマト

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収穫したナスを袋に入れます

おわりに

シリアで農業は人びとの日々の生活の支えとなっています。このプロジェクトを通じて、私たちパルシックは地域を活性化し、地域の食糧生産を支援することを目指しています。過去数年間、私たちは農家の人びとと共に成功を収め続けており、今後もこの成功を続けていきたいと考えています。

(レバノン事務所 アンソニー)
*この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成および皆さまからのご寄付により実施しています。

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