特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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「チーズ作りを守り抜きたい」苦しみのなかの懸命な努力

  • 活動レポート

パルシックが20181月から20222月まで「酪農を通じた女性グループの生計支援事業」で支援をしてきた女性協同組合のメンバー43人は、現在ガザ地区南部のマワーシエリア(1)にテントを立てて、避難生活を続けています。戦争以前からチーズやヨーグルト作りに熱心に取り組み、戦争が始まる直前には「ラファ県のチーズ工場に牧場を併設して乳製品の生産量を増やそう」と意気込んでいました。(記事:美味しい乳製品を作っています!(女性組合の活動))しかし、2023107日以降、女性たちは何度も避難をしなければならず、それでも「チーズ作りを諦めたくない」と、時には乳製品を作る資材を抱えながら逃げ続けていました。

そんな女性たちがチーズ作りを再開できたのは2024年6月でした。イスラエル軍によるラファへの地上侵攻により、マワーシエリアに避難した直後、女性協同組合のリーダーであるヤスミーンさんは、メンバーのサファさんと一緒に、避難先のテントで「少しでも子どもたちに栄養価のあるものを食べさせたい!」と、粉ミルクや材料を購入してチーズを作り始めました。

  • ※1イスラエル軍が表向きには避難指定区域とするガザ地区南部のエリア。ガザ地区のわずか11%ほどの面積。
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チーズ作りに必要な生乳の入手は困難なので、料理用の粉ミルクを使います。
今ではこの粉ミルクも値上がりしています

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固まったチーズを切り分ける様子

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巻きすでチーズの形を整えていきます

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固めたチーズを販売用のサイズに切り分けます

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切り分けたチーズに塩をかけてチーズの持ちを良くします。この後、販売用の袋に入れます

戦争以前は新鮮な牛乳や、羊農家が届ける搾りたての羊乳を使ってチーズを作っていました。(記事:搾乳機で、羊の搾乳が楽しく簡単に)生乳が足りない場合は粉ミルクを混ぜることもありましたが、粉ミルクだけで作るチーズは味が少し薄く、以前作っていたものほど美味しいとは言えません。しかし、物資が限られた環境で、あるもので精一杯工夫を凝らして作るチーズは、キャンプの人びとに大変喜ばれていました。ヤスミーンさんたちが作るチーズを別の地域で販売するため、ラファ県の海岸沿いから氷を入れたクーラーボックスを持ってチーズを買いにくる人もいるほどでした。

夏の炎天下では、作ったチーズが腐らないようにテントを新たに設置して、ソーラーパネルや発電機で確保した電気で冷蔵庫を使い、チーズの鮮度を保っていました。イスラエル軍の地上部隊が夜にテントの近くまで迫って来た際には、その夜だけ退避をして、翌日には安全を確認してテントに戻り、朝7時半からチーズ作りを再開していました。

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夏の強い日差しを防ぐために新たに設置したテント。この中でチーズを作っています

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粉ミルクと水を混ぜた後に、レンネットを数滴入れて混ぜると、
ミルクが凝固してたんぱく質を分解し、風味も作られます

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久しぶりにみんなで協力しながら、戦争前の日常であったチーズ作りを行うことは、束の間の心の癒しにも繋がります

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チーズ作りに参加したいと、片道1時間半かけて駆け付ける女性もいます

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10月に入り、戦争以前から取引のあったスーパーでもチーズの販売を再開することができました

しかし、202410月以降、ガザ地区内への粉ミルクを含む食料全般を載せたトラックの入域数が激減しており、女性たちは粉ミルクの確保ができず、チーズ作りを一時中断しています。そのような中、ヤスミーンさんたちは「チーズが作れないなら、カアク(※2)を作ろう。収入源を失うわけにはいかない」と、何とか調達できた小麦粉でカアクを焼いて、販売を続けています。

  • ※2カアク(またはカーク)は中東で人気のあるパンの一種で、ゴマをまぶしたリング状のパン。スナックとしてそのまま食べたり、ザアタル(ハーブとスパイスのミックス)やオリーブオイルと一緒に楽しんだりします。
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25kgの小麦粉から300個のカアクを作ることができます

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カアクは空腹に苦しむ人びとのお腹を満たし、命を守る貴重なパンとなっています

イスラエル軍による検問所の利用時間の制限や、物資の搬入許可が下りないことで、物資をトラックでガザ内部に入れることが極めて困難ななか、「いつか粉ミルクを入手できたら、すぐにチーズ作りを再開したいです。チーズ作りを守り抜きたい。どんなに苦しくても諦めない」と、ヤスミーンさんたちはチーズ作りの再開を待ちわびています。そして、今できることに専念しようと今日もカアクを焼いて販売しています。「どうか一日でも早く、戦闘が停止し、物資が十分に入ってチーズ作りを再開できる日が来ますように」と、女性たちは祈り続けています。

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パルシックガザスタッフのサハルが
女性協同組合員から購入したチーズを自宅で食べることができていた頃の朝食の様子。
チーズと一緒にアボカド、きゅうり、オリーブオイル、パンを食べていました

(パレスチナ事務所)
*女性協同組合による乳製品加工の取り組みは、連合・愛のカンパの助成および皆さまからのご寄付に支えられています。

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