特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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トルコ:寒さ厳しい地で。越冬支援と家畜用テントの設置

  • 活動レポート

カハラマンマラシュ県中心から車で1時間ほど、北部山間地帯を貫くトンネルを抜けるとまるで某小説の冒頭を連想させるような雪国が眼下に広がります。パルシックが活動する同県ギョクスン郡は夏季の平均気温が摂氏40度超、冬季は転じて氷点下と1年を通じて季節の移り変わりを肌で感じ取ることができるところです。パルシックは、昨年11月より、同地にて被災世帯に対して越冬支援事業を開始しました。

コンテナ避難世帯への越冬支援物資の配付

ギョクスン郡は、マグニチュード7強を記録した最大余震の震源から30〜40キロほどしか離れておらず、地震の起こった活断層上に位置することもあり、この揺れにより多くの家が全壊・半壊、村によっては村内の半数以上の家が倒壊したところも少なくありません。

このような世帯に対し、昨年6月からトルコ政府により、それぞれの世帯へのコンテナの配布・設置が開始されました。このコンテナ(通称折りたたみ式)は構造上耐久性に欠き、また断熱加工も施されていないため、被災地の中でも特に冬場の気候が厳しい土地での適応性の問題が指摘されてきました。

ギョクスン郡でも、既に夏の時点で住民から、このようなコンテナでは冬を越すことはできないとの声が多く聞かれ、11月末の収穫期の終了をめどに多くの世帯が都市部や他県へ移住する動きが見られました。しかし、高齢者世帯や畜産農家など、他へ移ることが容易でない世帯も多く、12月からの本格的な冬を前に、それぞれが雨漏りを防ぐためのブルーシートを被せただけのものから、コンテナに併設する形で簡易的な居住スペースを建てるなど、何らかの形で越冬対策を行っています。

パルシックはこのような世帯に対して、冬場の住環境が少しでも改善されればとの思いで、越冬支援物資として暖房器具と冬服を購入できるバウチャーを配付しました。

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電子バウチャーを配付しました

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電子バウチャーを利用して地元の洋服屋で冬服を購入

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電気ストーブの配付

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電気ストーブを持ち帰る子どもたち

家畜用テントの設置

ギョクスン郡は農業畜産業が盛んなことで知られ、多くの住民が農業・畜産業のいずれかあるいは両方に従事しています。同地では畜舎と人の居住スペースを組み合わせた住居が多く存在し(1階が牛や羊などの家畜、2階が人の居住スペース)、比較的規模の大きい村や郡中心部を除き、郡内の過疎農村や山間部では、このような丸太と土に藁を混ぜた土壁で建てられた家が主流となっています。

今回の地震で被害を受けた家々の多くもこのような家屋で、震災により多くが全壊、それにより人間と家畜両方の住居を失った世帯が多数あります(また家畜が倒壊した家屋の下敷きになり亡くなったというケースも多々聞かれました)。

震災後から夏場にかけては、多くの農家が家畜を野外で飼育していましたが、冬場の気温が零下になり積雪も多い同地では、本格的な冬を前にして畜舎の修繕再建が急がれ、各農家がそれぞれに丸太やトタンの囲いにブルーシートを被せた簡易的な畜舎の建設や、親戚などの畜舎で空きがある場合はそこで当座の間家畜を飼育させてもらうなどの個々に越冬準備をおこなっていました(ただし、複数世帯での共同での飼育は、衛生管理の問題やまた悪運ナザールを呼ぶなどの理由で好まれていません)。

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村人が自分たちでブルーシートで補強した家畜小屋など

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冬を迎える前の家畜の様子

農家の中には、畜舎の準備ができないために、家畜を凍死させるよりはと、家畜を売却する農家も少なくなく、農家によっては(特に元々飼育していた頭数が少ない場合)長期的な生計基盤を失う、あるいは経済的脆弱度が高まる世帯もあるために、郡全域で懸念の声が聞かれていました。

このような状況に対応するため、パルシックは震災により畜舎を失った家畜農家でこのように経済的な脆弱度の高いとされる農家に対して、耐久性、耐寒性、耐候性に優れた家畜用テントの設置を行いました。家畜たちが震災後初めてとなる同地での厳しい冬を越すことができ、農家の長期的な生計復興に向けての足がかりになればとの思いで活動を行っています。

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家畜用テントの設置

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越冬用の家畜用テントと羊たち

震災から1年2か月、被災地の今

パルシックが活動するカハラマンマラシュ県では、大規模な住宅開発が県の中心と郊外の農村地帯にて昼夜の休みなく行われている傍ら、県の中心部でもいまだに震災直後のままで残されている建物が多数存在し、現在でも建物の解体作業が日々行われています。

県内には震災により11万戸以上の住居のニーズがあるとされていますが、現在までにその17%ほどのみ新たな住居の建設が完了しているのが現状で、トルコ政府は仮設コンテナサイト(1月時点で県内に55ヶ所)での生活は最低3年は続くだろうと発表しています。

地震の傷跡がいまだに生々しく残る被災地でも、時間の経過とともに現場の復旧復興状況が変化し、震災支援活動も緊急支援から復興再建活動に移行しつつあります。

これからも、被災地の声を聞きながら自分のできる形で被災地のために関わっていきたいと思っています。

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(トルコ事務所 土橋)
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