寒さに負けない、未来への希望をつなぐ教育支援
- 活動レポート
パルシックは、2020年からレバノン北部アルサール市でシリア難民の子どもたちへの教育支援を実施しています。2023年9月からはアルイマン校で、シリア難民の4年生から6年生に対して、公教育の機会を提供しています。また同校に通うレバノン人の子どもたちに対して通学支援を実施しています。
アルサール市は標高1,500メートルの山間部に位置しています。そのため毎年気温がマイナスを記録することも珍しくありません。冬季には積雪のため道路がふさがれることもあり、昨年は学校が10日間休校となってしまうこともありました。
パルシックは、毎年、子どもたちが通う学校に暖房用の灯油を届ける越冬支援の寄付キャンペーンを実施しています。今年も皆さまから総額2,278,530円が集まり、アルイマン校の240人のレバノン人と603人のシリア難民、合わせて843人の子どもたちが学ぶ全37教室に、無事に3か月分相当の灯油を届けることが出来ました。ご支援いただいた皆さま、誠にありがとうございました!
募集が終了した寄付キャンペーンのお知らせページはこちら↓
寒さに負けず学びたい。シリア難民とレバノン人の子どもたちが、学校の暖房用灯油を必要としています
この冬の現地の様子と先生からの感謝のメッセージをお届けします。
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アルイマン学校の先生と子どもたち
水害に見舞われた難民キャンプ
今年のレバノンは比較的暖冬になりました。しかし、12月と1月に学校周辺の難民キャンプ地が局地的な豪雨に見舞われ、水害が発生しました。難民キャンプ地は水はけがとても悪く、こうした水害にはとても脆弱です。テントの中まで池のように泥水が浸水し、ベッドや床などが水浸しになってしまう事態になりました。その影響で、子どもたちが濡れた衣服で風邪をひいたり、体調を崩したりしてしまうケースがありました。
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1月14日学校周辺の難民キャンプの様子
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テント内が浸水したので外で暖をとる子どもたちの様子。濡れた服を着たまま外に出ると、冷たい風で体の芯まで冷え切ってしまいます
アルイマン学校の子どもたち
アルイマン学校は8時半に一時間目の授業が始まるので、8時ころに子どもたちが学校の前に集まってきます。日本の学校よりも始業時間が早いですね。早朝はやはり一日の中でも特に寒いです。登校してくる子どもたちの耳や鼻は寒さでいつも赤くなっています。とてもよく挨拶をしてくれて、握手してくる子どもたちの手見ていると、手にあかぎれやひび割れがある子どもたちもいます。寒さに伴い乾燥もひどく、生活環境の厳しさが伝わってきます。
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登校してきた子どもたち
先生たちは子どもたちがクラスに入る前に各教室のストーブを焚いて待っています。レバノンの学校はコンクリートで出来ており、前の晩の寒さが校舎に残っています。そのため、教室内を暖めるのも少し時間がかかり、先生方はいつも事前に準備して待っています。ストーブはアラビア語で「スビエ」といい、教室に入る前に子どもたちはよく先生に「フィー ソビエ?: ストーブついていますか?」と聞いています。朝、教室に入るとよく見る光景のひとつです。子どもたちはストーブを囲んで暖まります。このストーブは家庭でもよく使われていて、少し小柄のストーブでも十分に教室を暖めることが出来ます。
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ストーブを準備する先生
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暖房の入った教室で一時間目を迎える子どもたち
レバノンは現在経済危機にあり、現地通貨の価値はこの数年で大暴落しています。輸入品である灯油は、この影響を受けてかなり高額なものになってしまいました。灯油の代わりに薪ストーブを使用し始める家庭が増えています。しかし、薪となる良質な木材があるわけでもなく、代わりにゴミを燃やしたりするので煙が発生しやすく、呼吸器官に悪い影響が出ます。灯油ストーブは教室で安心して学ぶことのできる環境を子どもたちに提供しているのです。
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冷え切った手を暖める子どもたちの様子
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ストーブを囲む子どもたち
アルイマン学校の校長先生からも今回の越冬支援に関して「毎年厳しい寒さのアルサール市で冬の間も子どもたちが学校で学ぶことが出来ました。越冬支援を実施していただきありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。
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感謝を伝えてくれるアブドルアリ校長先生
学校を取りまく状況
今回ご支援いただいた灯油のおかげで、843人のシリア難民とレバノン人の子どもたちが冬の間も安心した環境で集中して学業に取り組むことが出来ました。重ねて厚くお礼を申し上げます。
現在レバノンは経済危機、難民問題、政治汚職など様々な危機にあります。学校教育においても、コロナ禍での学校閉鎖、慣れないオンライン学習、不平等な待遇に対する教員のストライキなどが発生し、継続して子どもたちが学習に取り組める環境を作るのが難しい状況にあります。そのため、こうした学業に集中できる環境はとても貴重なものなのです。今回の支援対象である次世代を担う843人の子どもたちが、この先行きの見えない情勢の希望になるとパルシックは信じています。今後とも引き続き、ご支援をいただきますようどうぞよろしくお願いいたします。
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真剣に授業に取り組む子どもたち
(レバノン事務所 中島雅樹)
*この事業は、皆さまからのご寄付で実施しました。