特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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1年が廻り。アルサール・アルイマン校の今

  • 活動レポート

パルシックが教育支援を行なっているアルイマン学校も学期終わりを迎えました。子どもたちと先生たち、この一年間みんなで共に学びの場を作ってきました。6月の最終試験を終えて学校も一段落。と思いきや、これから待ちに待ったサマースクールが始まります。

サマースクールでは、子どもたちが課題研究などを通してこの1年間に学んできたことの復習をします。夏は気温が40度を超える日も多いアルサールですが、みんな休むことなく学校へ通いその意気込みには驚くほど..!今年度パルシックが支援してきたのは4〜6年生。自主課題の研究にも熱が入ります。

今年は、子どもたちが自分たちの住む難民キャンプの抱える様々な問題について調査をしました。テーマごとにチームを組み、それぞれのキャンプでインタビュー、先生と一緒に結果を分析して、サマースクールのイベントで発表します。

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課題研究を発表する子どもたち

5年生のリタージさんは、キャンプとその周辺地域の環境問題について調べました。彼女の住むアルホセン・キャンプは、大小様々なキャンプが集まる市の南東部に位置し、この地域でも最大規模の700人以上が住んでいると言われます。今回の調査の結果、インタビューに答えた住民の半数以上が飲み水の質、空気汚染とそれに伴う呼吸器系の問題を指摘しました。

安全な水の確保は、アルサール市、特にシリアからの避難民の多くが住む非公式のキャンプでは深刻な問題です。その必要性の高さに反して、上下水道が十分に整備されておらず、貴重な水源からの水も生活排水による汚染が懸念されています。インタビューでは、これに関連して、キャンプと周辺地域での劣悪な衛生環境と医療施設へのアクセスの悪さも指摘されました。

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サマースクール、お互いに教え合いながら復習します

健康への影響は、水の問題のみではありません。アルサール市では、人口増に伴う家庭ごみの増加が、既存のインフラを逼迫しており、大半のゴミが市郊外の埋立地に投棄されるか焼却処分されているのが現状です。ごみの焼却処分の煙により発生したスモッグが、キャンプ周辺に停滞することも珍しくありません。健康への影響にさらに拍車をかけているのが、周辺の採石場からくる粉塵です。採石はアルサール市の数少ない産業の一つで、市の東部には採石場が多数あり、その総面積は市中心の2倍以上になります。実際、リタージさんの住むキャンプから1キロメートル圏内には、大規模な採石場が複数存在します。

今年のサマースクールでは、このようなコミュニティの直面している問題に対して子どもたちが主体的に調査を行い、解決策を考えました。環境問題では排水設備の整備、地域ぐるみでのごみの管理、コミュニティ主体のイニシアチブの必要性が提言されています。子どもたちにとってこのような経験は、自分たちの住む地域への問題意識の向上になると同時に、自主性や主体性の育成にもつながります。

今回の課題研究で環境問題に取り組んだリタージさんは、学校が始まった2023年10月当初は、どちらかといえば内気で、授業にもあまり積極的に参加できていませんでした。しかし、両親と先生たちのサポートもあり、学期が進むにつれて徐々にペースを掴み、今では困っている子がいたら率先して教えに行ってくれるなど自発的に行動できるようになりました。課題研究では、この1年で培ってきた主体性をフルに生かしながら、チームワークの大切さも学びました。

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リタージさん

そんなリタージさんの将来の夢は学校の先生になることです。リタージさんを含め、シリア難民の子どもたちの多くは、シリア内戦が始まった後に生まれた世代です。自我の芽が育つ前に、戦争のような個人では抗いようのない力に翻弄されながらも、前を向いて生きる子どもたちの姿には心を打たれると同時に、どこかこれまで心の奥底に眠っていたところに光が宿るように、自分たちも力をもらいます。

レバノンでは、未だに出口の見えない経済危機や潜在的な差別と偏見など、シリアからの避難民の置かれている状況は困難かつ先が見えないのが現状ですが、子どもたちの仄かな、でも確かな光を道標に、この光を絶やさないよう、これからも子どもたち、コミュニティと共に活動をしていきます。これまでの皆様からのサポートに感謝すると共に、これからもご支援のほどどうぞよろしくお願いいたします。

(レバノン事務所 土橋弘)
*この事業は、ジャパン・プラットフォームの助成と皆さまからのご寄付で実施しています。

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