特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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能登地震  想いを繋いで

  • 活動レポート

能登半島地震の発生から1年。

私は、震災前から能登に縁があり、とても魅力ある場所だなと思っていました。

その能登で起こった大地震。そして追い打ちをかけるように発生した9月の豪雨。大きく変わってしまった能登の様子に胸が締め付けられる一方、そこに住む人の力強さに励まされ、自分たちに何が出来るか考えながら奔走した1年になりました。

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輪島市河井町のわいち通り。ほとんどの店が全半壊した

  • 繋がりが徐々に形になっていく

発災後3か月は、避難所や公民館でコーヒーを提供したり、能登町の仮設住宅に入居される方への生活家電の購入支援をしたり…。日々やることは多くありましたが、発災から3か月経っても一部地域で断水が続く状況。調理ができない、洗濯に困っているという声を聞いても物資を配ることくらいしかできず、本当に被災者が必要としていることが出来ているのか、と悶々とした日々を送っていました。

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断水のため各所に設置された移動トイレ

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町から日々更新される水道の復旧状況に一喜一憂

4月からは、それまでの活動に加え、輪島市の重蔵神社と連携し週1回の物資配付を開始。5月には能登町在住のスタッフ岡さんが加わり、3人体制に。ゴールデンウィークと夏休みにはボランティアを受け入れ慌ただしい日々が過ぎていきました。

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ゴールデンウィークは社会人ボランティア6名が参加。輪島市の公費解体予定のガレージを片づける様子

ようやく必要とされていることに応えられていると手ごたえを感じるようになったのは、9月の豪雨後あたりから。「公民館でイベントをやるからパルシックさん手伝ってくれない?」とか、「しめ縄を作って仮設住宅に配りたいんだけど一緒にやってくれませんか?」といったお誘いやお願いの声をかけてもらうことが増えてきました。

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地元の方から相談を受け一緒に開催したしめ縄づくりのワークショップ

スタッフ3人と少人数で活動しているため、出来ることに限りがありますが、他団体と連携したり地元の人と一緒に活動したり、広がりを感じるようになりました。

遅れていると言われる能登の復興

能登地震に関する報道では、「能登の復興が遅れている、進まない」といった内容がよく取り上げられます。仮設住宅の建設、公費解体の進捗、インフラの回復など、確かに遅れていると感じる部分は多くあります。

昨年9月、珠洲市では震災から8か月が経っても避難所で暮らす人が200人近くいました。まだ水が出ない地域がある中、入浴支援をしている自衛隊が撤退することが決まり、役場の職員の方に「途上国ならまだしも、今の日本でこういうことが起こっているのに、どんどん報道も少なくなって見放されているような気持ち…」と言われました。

その時の話がすごく印象に残っていて、被災者にこんなに負担を強いる社会で良いのか、早期の復旧・復興に加え、「能登のことを気にかけている人たちがいる」、と能登にいる人たちが感じられることが重要だと思いました。

  • 二度の災害で折れた心の復興

  • 拠点を構えている能登町は9月の豪雨による家屋の被害は限定的でしたが、農地が大きな被害を受けました。豪雨被害をきっかけに農業をやめようと考えている人がかなりいるという話も聞きます。昨年10月、知り合いに紹介してもらい、農地の土砂だしのボランティアに参加しました。受け入れ先の農家さんが「本当はこれを機に農業をやめようかと思ったんだけど、ボランティアの人がたくさん来て土砂だしをしてくれて。それがすごく嬉しくって、もう一度農業を頑張ってみようかなって、思えるようになったの」と話してくれました。
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土砂がビニールハウスに流れ込み20-30センチほど泥が堆積していた

自分一人で頑張らないといけないと思うと心が折れてしまうけれど、誰かが支えてくれている、一人で頑張らなくて良いんだと思えたら、少しでも前を向けるのではと思いました。

また、能登の農家さんにとっては、農業は生業だけではなく生きがいでもあります。農業を続けていくことはただ単に生活の基盤を取り戻すだけではなく、生きがいを守っていくことにもつながります。

縁と想いを繋いで

2025年、震災から1年が経過した能登はまだまだ復旧・復興の途中。よく色んな人からどんなことをしているの?どんなことをするの?と聞かれます。予定している活動はあるけれど、私自身が一番取り組みたいことは1人でも多くの人を能登に連れてくること。それはボランティアでも観光でも、人を訪ねてきても、どのようなスタイルでも良いと思っています。

復興にはもう10年も20年かかると言われています。でも、その10年を待つのではなく、復興の過程で足を運んでほしいし見守ってほしい。それは能登の人のためだけではなく、能登に来る人も絶対に能登の良いものを見つけて帰ってもらえると信じているから。

自然に癒されたり、美味しい食事に満たされたり、温かい人との出会いだったり。昨年ボランティアに来た学生は、「何か被災地のためにと思ってきたけれど、逆に自分が元気をもらった」、「またぜひ能登に来たい」、と口を揃えて前向きな気持ちを伝えてくれました。実際に、今年の春に有志メンバーで再訪する計画を進めています。

今年は、そういった繋がりを意識しながら紡いでいきたいと思います。

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能登の春。季節の移り変わりを身近に感じられるのも能登の魅力

(能登事務所 小栗清香)

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