セルフィート県ヤスーフ村での植樹イベント
- 活動レポート
パレスチナのヨルダン川西岸地区では、毎年、地域の緑化、環境保護を目的に植樹事業を行っています。2023年度は、セルフィート県のヤスーフ村において耕作放棄地に植樹をして、公園として再生する活動を行いました。
ガザでの戦争が始まった2023年10月以降、ヨルダン川西岸地区でもイスラエル軍や違法入植者による暴力によってパレスチナの人びとの行動が制限されていて(前回記事)、2024年2月に予定していたヤスーフ村での植樹イベントは、5月14日にようやく開催することができました。
植樹イベントには、村人に加えて、村外からも参加者が来て、アーモンドやくるみなどの高く育つ木の苗や、ジャスミンやバラなどの花の苗、アプリコット、レモンやグアバなど様々な果樹の苗を植えました。
ヤスーフ村の副村長アブ・ユセフさんがまずリンゴの苗を植えました
アボカドの苗を植えるヤスーフ村のサーレフさんと西岸事務所のヤラ
植樹イベントの後は村の人たちが用意してくれたお昼ご飯を、満開のざくろ林の中でいただきました
お昼ご飯はサジーエという中華鍋のような鍋で、肉や野菜をスパイスで炒めたパレスチナの料理
植樹イベントに参加したムジャヘドさんは、小さな子どもが2人いるので村内で安心して子どもを遊ばせる場所ができることをとても喜んでいました。
ムジャヘドさんは代々受け継ぐオリーブ畑で500本以上のオリーブの木を育てていましたが、昨年11月の収穫期にイスラエル違法入植者が畑にやってきて放火し、200本のオリーブの木が被害にあいました。オリーブの木の多くが全焼したわけではありませんが、再び収穫できるようになるまでに5年はかかるそうです。また、イベントの数週間前にも違法入植者がやってきて、畑に植えたばかりのアプリコットの苗木が根こそぎ倒されたそうです。
ムジャヘドさん(一番左)はイベント当日、植樹作業の合間にコーヒーを振舞ってくれていました
植樹後、ヤスーフ村は子ども用の遊具や公衆トイレも設置してから、公園として開放しました。気温が下がる夕方に、たくさんの村人が家族連れで夕涼みに来ているそうです
植樹イベントにはヤスーフ村の学校の子どもたちも参加する予定でしたが、イベント直前に豪雨が続き延期しているうちに学校がテスト休暇に入ってしまい、残念ながら参加できませんでした。その子どもたちもイベントの後に、公園内にある水源の発掘作業の手伝いに来ています。
ヤスーフ村は2,000年以上前から集落として人びとが住んでおり、大昔、この水源から湧き出ていた水は、「万病に効く水」として人びとが使っていたという伝説があります。今は水が湧き出ていませんが、パレスチナ政府観光遺跡省の調査によると、水が再び出る可能性があるそうです。
公園で水源の発掘作業を手伝っている村の子どもたち。ビニルシートの下に、水源跡につながる洞窟があります
ヤスーフ村での植樹事業の最初から最後まで大活躍だった副村長のアブ・ユセフさんは「2023年10月7日以降、村は治安状況も経済状況も悪化し塞ぎ気味でしたが、子どもも安心して遊べる緑のあふれる公園ができたことで少し活気を取り戻しました。さらに古い水源が復活するかもしれないという期待も膨らんでいます」と話しています。
(パレスチナ事務所)
*この事業は、国土緑化推進機構緑の募金の助成および皆さまからのご寄付により実施しています。