キックオフ・セレモニーの開催 ~紅茶の生産性を上げる5年間の事業を開始しました~
- 活動レポート
パルシックが2011年度からスリランカ南部デニヤヤでの紅茶の有機転換事業を開始して、13年の年月が経ちました。この間に、小規模有機紅茶生産者グループ「エクサ」を結成し、有機認証を取得し、エクサへの参加農家を増やし、有機紅茶として日本への輸出を続けてきました。
しかし、有機紅茶の生産性がいまだ低く、収入向上につながっていないことがエクサのメンバーが有機の圃場を十分に広げられない、また地域の新規農家が有機転換に踏み切れない要因となっています。
この大きな課題を解決することを目指して、2024年6月1日からJICA草の根技術協力事業による5年間の事業を開始し、日本の堆肥作りの専門家とスリランカの紅茶栽培の専門家の協力を得て、有機紅茶の生産性の向上に取り組んでいきます。
事業の開始を農家や地域の人たち、関係者に伝え、お祝いをするキックオフ・セレモニーを、6月5日にデニヤヤのキリウェラドラ村のお寺で開催しました。
農家60名のほか、地方行政、僧侶、JICAスリランカ事務所の方々、有機紅茶加工場のオーナーなど、多くの人が参加し、盛大なセレモニーになりました。
たくさんの参加者で埋まったセレモニー会場(前日までの豪雨のため、室内で開催)
最初に、伝統的なオイル・ランプの点灯を行ったあと、パルシックを代表して、専務理事でフェアトレード担当のロバーツが参加農家さんはじめ関係者への謝辞、事業の意義、これから目指していくことを説明した後、来賓の方々からスピーチをいただきました。
事業の意義について話すロバーツ
地域の行政機関のコタポラ郡長からは、「パルシックが環境保全のため、持続可能な農業のために、これまでも素晴らしい事業を実施してきたことに大変感謝していますし、今回こうして新たに5年間の事業を始めることに大変期待をしています。この事業が成功することを願っています」と地域を代表して応援のメッセージをいただきました。
近くのモロワカで有機紅茶の茶園を運営しているランジャンさんのスピーチには、多くの農家が自身の経験と重ね合わせたうえで、真剣に聞き入っていました。ランジャンさんは、有機農業を始めることになったきっかけ、その後有機農業を続ける中で直面してきた数々の困難を話した後、「今も様々な困難があるが、それでもこれからも有機の紅茶栽培、有機農業を続けていきたい」という強い思いを話されました。
同時に、こうして有機の紅茶栽培を続けてこられたのは、(パルシックの紅茶の加工場でもある)有機の紅茶加工場のニルミニ工場が茶園の近くにあったことが大きく、ニルミニ工場のこれまでの貢献への感謝が改めて伝えられました。
スピーチの合間に披露された子どもたちによる伝統的なダンス
その他、JICAスリランカ事務所や地域銀行の代表者などからもスピーチをいただいた後、農家グループのエクサを代表して、ピヤセーナさんが会を締めくくる感謝のスピーチをしました。
ピヤセーナさんはエクサのこれまでの歩みを紹介した後、自身の経験、とくに2022年の経済危機以降、有機農業を続けていくことが経済的に厳しくなっている現状を伝えました。「それでも、環境に配慮した有機農業を続けていくことは地域にとって重要なことであり、有機農業をしていることに喜びと誇りを持っている」と話しました。そのうえで、「2011年からエクサの活動、デニヤヤ地域の有機農業を支えてきてくれたパルシックと、これからの5年間の事業でスリランカの紅茶産業の強化を支援してくださるJICAに感謝申し上げます」という感謝の言葉で、スピーチを締めくくりました。
感謝を伝えるピヤセーナさん
パルシックが10年以上にわたり、デニヤヤ地域の有機茶葉栽培、有機農業を支えてこられたのは、農家さんや地域の方の協力に加えて、フェアトレードで輸入した紅茶を買い続けてくださった日本の皆さんのおかげです。これからもぜひエクサの活動を応援していただけると嬉しいです。
(スリランカ事業担当 西森光子)
*この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。
セレモニーのために正装したパルシック・デニヤヤ事務所とエクサのスタッフ