キャンプで生き抜いたパレスチナ人への食糧支援
- 活動レポート
パルシックは2019年より、シリアの首都ダマスカスのヤルムーク・パレスチナ難民キャンプで、炊き出しと食糧バスケットの配布を行っています。
前回お伝えしたように、ヤルムーク・キャンプは2018年まで戦闘の激戦地となり、建物の70~80%が崩壊し、90%以上のパレスチナ難民はキャンプの外に避難しました。しかし、経済的に避難することも出来ないパレスチナ人約300世帯は、キャンプの中で生活を続けてきました。
事業を開始するにあたり、提携団体からは「多くのパレスチナ人はヤルムーク・キャンプの周辺に避難し支援を必要としているが、キャンプに残っている300世帯に対して食糧支援を行い、彼らがキャンプを離れないようにして欲しい」という要望がありました。彼らがキャンプを離れると、誰もキャンプにはいなくなり、シリア政府が全て更地にして再開発を行い、ヤルムーク・キャンプの存在自体が無くなる可能性もあると言っていました。
長い間戦闘を生き延びてきた300世帯は、キャンプでひっそりと生活しており、デリゾールでの活動と同じように、炊き出し活動から開始しました。3ヵ月の炊き出し後は、ほとんどの世帯が調理に必要な道具を持っていることが分かったので、乾燥した食糧中心のアイテムを袋詰めにして、1か月に1回、1か月分の食糧バスケットの配布に切り替えました。
配布側がメニューを決める炊き出しとは異なり、食糧バスケットは自分たちで自由に調理ができるので嬉しいという声を多く聞きました。しかし、数十世帯は戦闘の被害により調理が出来る環境にはなく、炊き出しで利用していた炊事場を継続して運営し、食材を持ち寄り自由に調理できる配慮を行いました。調理場にはお母さんと娘が一緒に調理している姿や、女性同士が料理をしながらおしゃべりを楽しんでいる姿がありました。戦闘中はアパートで息を潜めて生活をしていたので、みんなで安心して集まれるスペースができたことを喜んでいました。しばらくして調理環境が整っていない世帯には調理用具一式を配布し、調理のできる環境を整えましたが、シリア国内での物価上昇により調理用の燃料が購入できない世帯もいるため、冬の間はヤルムーク・キャンプのパレスチナ人が不自由なく料理が出来るよう、引き続き炊事場を開放しています。
キャンプの中に、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が事務所を構え、クリニックや子どもの学校を運営していましたが、戦闘が始まってからは全ての活動が停止され、再開の見通しが立っていないため、まだまだ戦闘前の状況に戻るのには時間がかかりそうです。
パルシックは現場の声に耳を傾け、今一番必要としている支援が届けられるように、これからも活動を継続していく予定です。
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ヤルムークキャンプの様子キャンプの中は、戦闘終了後も復興に至っていない
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ヤルムークキャンプの様子
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炊き出しの調理の様子
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食糧バスケットの配布
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調理器具のない世帯へ提供している炊事場の様子。親子で協力しながら料理をしている