クロロ集落での道路整備事業
- 活動レポート
2022年6月から12月にかけて公益財団法人日本国際協力財団の助成のもと、道路作りの支援活動を行うNPO法人道普請人と協働でマウベシ郡のクロロ集落につながる道路の整備事業を行いました。
マウベシ郡は、パルシックのフェアトレードコーヒーの生産地で、標高1,300~1,700メートルの山間部に位置します。マウベシ郡の中心地から各集落への道路のほとんどは未舗装で、その中でも今回の事業地であるクロロ集落は渓谷に張り付くように形成されており車両での進入が特に困難です。
住民たちは毎年コーヒー収穫期が近づくと傾斜のきつい斜面のぬかるみに石を配置したり、鍬やスコップで道幅を広げたりして車が入れるように道路の手入れをしますが、収穫期が終わり雨季になると整備した道は崩れ、翌年のコーヒー収穫前にあらためて補修する、ということを繰り返してきました。
2003年にクロロ集落の住民がグループを結成し、コカマウ(マウベシコーヒー生産者協同組合)に加入して以来、集落につながる道路の整備はこの集落にとって大きな課題となっていました。
馬がまっすぐ登りたがらないくらいの急傾斜
実はこの事業は2020年3月に現地視察を実施し、6月には事業実施予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で専門家の渡航が困難になったことにより一時中断していました。
2022年に入り、日本から東ティモールへの往来が平常に近い状態に戻り始め、2022年の6月に再開することができました。今回の道路整備事業では、クロロ集落の中心部に繋がる道で最も車が登りづらい急な坂を含む約200mの道を整地してコンクリート舗装を行いました。
1日の作業終わりに自分たちで作った道路の前で、道普請人の田川専門家と
今回事業を協働して行った道普請人は「自分達の使う道は自分達で直す」というコンセプトのもと、ただ資金提供や道路敷設を行うのではなく、住民に技術を提供し住民自身が道路を補修する活動を世界各地で実施しています。
今回の事業でも道普請人の専門家の技術指導の下、パルシックで雇用したマウベシ出身のエンジニアスタッフと、クロロ集落の住民が自分たちの手で道路作りを行いました。クロロの住民たちはこれまで自分たちでコンクリートを使って家を建てたりしている経験から、専門家の指導を受けながらも慣れた手つきで作業を進めていきます。
集落の住民が協力して作業を進めていきます
昨今の気候変動の影響で、予測不能な雨に悩まされたりもしましたが、専門家が日本へ帰国した後も住民たちとエンジニアスタッフが自発的に活動を継続してくれたことで、2022年のうちに無事道路を完成させることができました。
車でスムーズに集落の中心部まで行けるようになりました
完成後にはクロロにマウベシの郡長を招いて道路の完成式典を行い、クロロ集落の住民たちは自分たちの手で作った道路を誇らしげに披露していました。
現在もマウベシ郡内の集落への道路は舗装されていないところが多いものの、東ティモール政府の事業などで拡幅作業が進んできています。しかし今年も雨季が本格的になってくると土砂崩れで道が通れなくなったり、ぬかるみにはまって熟練のドライバーですら身動きが取れなくなったりするような状態が続いています。
市場へのアクセスが改善されれば、コーヒーだけではなく野菜や果物などの換金作物の栽培および出荷が活発となり、住民の生計向上につながることが期待できます。 この事業で得た経験を他集落での道路整備にも活かし、それを通してマウベシ全体の暮らしの改善に少しずつでも寄与していけるようになることを願っています。
道普請人 田川専門家とクロロ集落の人びと
(東ティモール事務所 伊藤淳子)
※この事業は日本国際協力財団からの助成のもとNPO法人道普請人との協働で実施しました。