特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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生産者協同組合 自立への道 [後編]

  • 活動レポート

個人的なやりきれない感情はとりあえず脇に置いて、パルシックはこの事態に厳しく対応することを決めました。“不正を行った役員は解雇すべき”と意見しました。200世帯ほどが集まって多額の資金をどう使えばよいのか分からないのならば、組合員自身が管理しやすい集落単位のグループ運営に移行し、資金残高も各グループに戻すことを提案しました。同時に、この期に及んでも役員の不正を「過ぎたこと」として、カネを返せとも言わず、目の前で役員の家がセメント壁、トタン屋根の立派なものに変わっていっても見て見ぬふりをする組合員ひとりひとりに、もう一度「組合とは何か」をよく考えてもらわなければ、と思いました。

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協同組合局とともに、2012年度のコーヒー事業について協議する代表者たち(2012年5月10日)

あれから1年半。コカマウは新しい役員を選出して再編への道を歩き始めています。グループ運営は実によりどりみどりでした。受け取った資金を貸付という名目で山分けしてしまったグループが多い中、1000ドルの資金を代表者3名が管理してコーヒー収穫期を乗り切ったクロロ、800ドルの資金を895ドルに増やして「分けろ」というメンバーの要求(あるいは代表者たち自身の中にある誘惑)をかわすためにパルシックに預けてきたリティマ、財布を分けられないから、とパルシックに預けたままグループで必要なものを購入するたびにマウベシ事務所にやってくるハヒタリ。大きなコカマウという規模では見えにくかったカッコいい代表さんたちの姿が浮き彫りになりました。

そしてこれが、東ティモール政府協同組合局と共通の経験となったことも大きな収穫でした。これまでも、信用組合の経験に偏る形式重視の協同組合局と、コカマウのような生産者協同組合が抱える課題や現状を共有してきましたが、私たちが伝えるどんな情報よりも“組合局の指導の結果、コカマウ役員が堂々と不正をおこなった”という事実は、彼らをより強く動かしました。“組合員ひとりひとりが組合を理解していない”という問題意識から、2011年12月に各集落を回って組合プロモーションを開きました。そしてコカマウ組合員には“コーヒーのより良い市場を”という共通のニーズがあることを見出しました。コカマウが課題をはらみつつも、「東ティモールの農民にとって生産者協同組合のモデルとなるよう、協同組合局としても重視していきたい」という言葉まで聞くことができました。

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新規加入グループへのコーヒー加工指導(2012年7月11日)

コカマウの危機であったにもかかわらず、2012年度はあらたに4集落が組合に加入しました。マウベシの街から車で1時間半、さらに徒歩で1時間以上も険しい山道を上り下りしなければ到達できないような遠隔地ばかりです。“コーヒーのより良い市場を”という共通のニーズは、コカマウの運営能力の実態を大きく超えて広がっています。2012年8月に発足した東ティモール第5次内閣は、これまでおざなりにされてきた地方開発に力を入れ、地方開発担当国務長官に加えて、産業・協同組合担当国務長官という新しいポジションが設置されました。

コカマウの新役員はほとんどが新たに加入した集落から選出されました。一新したい、という組合員の願いの現れかもしれません。私たちとしては、この10年間の経験が共有されていない新役員を、今後どのようにサポートしていくべきか、大いに考えるところです。これをコカマウにとどまらない普遍的な課題としてとらえ、対応を協同組合局はじめ東ティモールの関心を同じくする人たちと共有しながら、考えていきたいと思います。

(パルシック 伊藤淳子)

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