特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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コカマウとの深煎りな日々⑮ ~最終回!活動を引き継ぐマウベシの若者たち~

  • 活動レポート

コーヒー生産地のマウベシでは、今年は天候不順により全ての集落でコーヒーの収穫が遅れ、8月に入りようやく収穫と一次加工が進み始めていますが、裏作の年であることも相まって収穫量の減少が予想されています。長引く雨は実の成熟を遅らせ、時には収穫前の実を落としてしまうこともあり、生豆の品質への影響も懸念されています。

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各集落でようやく収穫、一次加工が始まりました

201911月から始まったコーヒー畑の改善事業は、マウベシ・コーヒー生産者協同組合(コカマウ)との連携のもと進められ、202410月に終了します。私が赴任した当初はそのほとんどが密生した林のようなコーヒー畑でしたが、台切りや植え替えによる若返りにより、手入れの行き届いた畑もちらほらと目につくようになりました。初年度に16集落31世帯と共に始めた畑の改善は5年目には28集落305世帯が参加し、事業開始当初のコカマウ組合の世帯数の半数以上が畑の手入れを進めています。

初年度から活動を継続しているモデル農家の畑では以前に比べて木々が整然と配置され、豊かな実りをもたらすようになりました。レボテロ集落のミゲルさんは、古い木を台切りして畑の若返りを進めていることで年々明らかに実の付きがよくなってきたと言っていますが、天候不順の影響で収穫量の増加を確認するのはこれからになります。

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ミゲルさんの畑では今年たくさんの花が咲きました

マウベシでは都市部や海外へ職を求めて出稼ぎに行く若者が増えている反面、コカマウ組合に参加する世帯は過去5年間で増加しており、コーヒー農家を続ける意志を持つ若者たちも存在します。当事業で制作した映像資料では、コーヒー畑の改善作業に取り組む若い組合員が「高卒では首都のディリに行っても仕事をみつけるのは難しい。コーヒー生産を続けることで世界の市場から信頼を得ることができる」と話してくれました。

また、パルシックで活動しているスタッフに山間部のマウベシと首都のディリどちらの生活がいいかと聞くと、「マウベシでの生活はなかなか仕事が見つからず経済的に厳しい面もあるが、自給自足に近い生活は物価高騰の影響を受けにくく、過ごしやすい」と言っています。

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協力して収穫をするミゲルさん家族

事業終了後は、コカマウがより自立的にコーヒー畑の改善を継続していく計画です。事業では各集落に技術普及員を育成することを目指し、各集落のリーダーたちが手本となり、集落内のメンバーと共同で畑の改善作業にあたるスタイルが定着しました。この共同作業をコカマウとして継続していくために、パルシックのスタッフとして5年間事業に携わったマウベシ出身の若者4名がコカマウのスタッフとして残り、活動を続けていくことが今年の組合総会で承認されました。

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パルシックマウベシチーム

近年の不安定な天候は、コカマウの農家の生活にも大きく影響を及ぼしています。しかしながら、世界的な気候変動が自分たちの将来にどう影響するかを理解し、対策をとることのできる農家はほとんどいないというのが現状です。伝統を守りつつも栽培方法や品質にこだわり、収入向上につなげていこうとする農家の意欲に、パルシックとしてはこれからもなにかしらの形で応えていきたいと思います。

この5年間の事業での経験を活かし、コカマウの組合員たちが伝統だけではなく畑の改善にも誇りを持って取り組み続けていくことでマウベシのコーヒー産業が成長していくことを期待しています。

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農家の家族

(東ティモール事務所 工藤竜彦)
*この事業はJICA草の根技術協力事業の業務委託を受けて実施しています。

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