女性たちの意欲が目に見える成果に!
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2023年3月に開始した東ティモール山間部における「女性の生計向上を通じた子どもの栄養改善事業」は、今年3月で3年目を迎えました。この事業は、農村地域の女性たちに花卉栽培の技術を普及し、切り花販売から得た収入を家庭内での栄養改善につなげていく、という取り組みです。事業の折り返し地点を迎えた2年目の活動について、レポートしたいと思います。
栄養改善の取り組み
事業2年目の2024年から活動に参加した8つの栄養改善グループで、栄養・料理教室を計10回実施しました。

アイレウ県の栄養改善グループ参加者たち
栄養教室では、これまで3大栄養素についてゲームを通して繰り返し学び、食事バランスの重要性について学んできました。料理教室では、季節の野菜や身近に手に入るタンパク源を活用したレシピを作成し、植物性たんぱく質、穀物などを活用した簡単に調理できる食事やスイーツを調理しました。

旬の献立・トウモロコシとかぼちゃのプリン
参加者に繰り返し伝えたことで、2月に実施した振り返りの会では、メンバーの88%が3大栄養素について理解しているという結果となりました。栄養・料理教室に参加している子どもたちの方が格段に理解・記憶力がよく、お母さんたちに教えている姿もみられ、ほほえましい光景です。

料理教室は絶好のおしゃべりの機会

料理教室の試食タイムは子どもたちに大人気
子どもたちには年に4回、1週間分の食事内容を「栄養日記」に記録してもらっています。これまでの分析で、2年目から活動に参加したグループは動物性たんぱく質を週に平均して7.5回消費していることがわかりました。1年目から参加しているグループは週に3.8回という結果だったので、比較すると多いように感じますが、栄養バランスとしてはもう少し増やしたいところです。

栄養日記をつけている子どもたちの身長、体重も定期的に測定しています
3月からは新たに40名の女性たちが栄養改善グループに参加する予定です。栄養チームでは引き続き、栄養・料理教室の実施と栄養日記の分析を通して、参加女性たちの栄養知識の向上と各家庭での栄養改善の実践につながるよう、丁寧な個別指導をおこなっていきます。
花卉栽培を通した収入向上の取り組み
東ティモール農水省検疫局との折衝に苦労をしましたが、今年はインドネシアからキク、バラ、葉物の苗を3回、計15万株輸入することができました。花卉栽培に参加している12グループで準備した畑に植え、試験栽培を開始し、一部グループでは育苗も開始することができました。

育苗施設の様子
また、病害虫対策や暑さ対策をおこなったことで、輸入した苗は順調に花を咲かせ、全グループが首都ディリにある生花店への出荷を開始しています。生花店には国産の切り花を応援したいという思いはありますが、インドネシア産切り花と比べるとまだ品質が劣るため、品質、量ともに安定させてほしいという要望をお店のほうからたびたび受けています。輸入品の代替となるには至っていませんが、事業開始から2年でここまでの花を栽培できるようになっているのは生産する女性たちの努力の表れです。市場の側にもその頑張りを認めてほしいと働きかけています。

見事に花をつけた国産の切り花の出荷準備
東ティモールの切り花市場はインドネシアからの輸入切り花で形成されてきたという経緯があり、市場が求めるのは「インドネシアと同じような花」です。熱帯花木やスターチス、アスターやキンギョソウなど、新しい花の市場を作り出す場合、需要と供給のバランスを調整し、品質と量を確実に上げて安定供給できるようにしていくことが難しく、今後の課題となっています。国産切り花の市場を拡大していくことにはラモス・ホルタ大統領をはじめ、政府高官たちは大変に前向きなのですが、農水省検疫局はインドネシアからの苗の輸入は規制しつつ、切り花には輸入許可を出し続けています。政府からのバックアップを期待しつつ、市場拡大の努力を続けていきます。

満開のグリーンハウスの前で
(東ティモール事務所 林知美)
*この事業は外務省NGO連携無償資金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。