栄養知識に加え、花卉栽培のノウハウを学んでいます
- 活動レポート
2023年3月から開始した「女性の生計向上を通じた子どもの栄養改善事業」では、女性たちが花卉栽培を通じて収入を得て、その収入を家庭での栄養改善にむすびつけることを目指しています。
栄養改善に必要となる知識を身につけてもらうため、山間部のアイレウ県アイレウ郡、アイナロ県マウベシ郡の女性たち41名と栄養グループをつくり、栄養ワークショップを開いて栄養に関する研修や身近な食材を使った料理教室をおこなうと同時に、女性たちの子どもたちの協力を得て、日々食べたものを栄養カレンダーに記録しています。
三大栄養素についてゲームで学ぶアイレウ県の女性たち
栄養カレンダーのつけ方を女性や子どもたちに教えます
栄養ワークショップで作った料理
事業開始時におこなった基礎調査からは、山間地域の一般家庭で栄養バランスの取れた食事を実現するには、調理を担う女性たちが栄養の基礎知識を習得することに加えて、たんぱく源となる食材が女性たちの身近に、手ごろに準備されていることが望ましいということが確認されています。山間部では、たんぱく源となる食材が圧倒的に不足しているからです。切り花からの収入で、肉や魚などの食材を購入できるようになるには、まだ時間がかかるため、収入がなくても必要なたんぱく源を補うことができるよう、オラ・プロ・ノビス(モクキリン)や蔓紫など、たんぱく源の豊富な植物栽培を取り入れてます。
たんぱく質の豊富なオラ・プロ・ノビス
女性たちにとって栄養以上に関心の高いのが花卉栽培です。東ティモールの山間部は気候条件から花卉栽培に適しているとはいえ、市場が求める切り花を育てることは女性たちにとって初めての経験で、農村女性たちが無理なく導入し、続けていける栽培方法を見極めることが成功の鍵となります。そのために、まずは技術導入をする私たち自身が愛媛県三間町にある「(株)葉月」さん、インドネシアのバリ島、西ジャワ、中央ジャワの複数の花卉栽培農家や花卉市場を視察し、学ばせていただきました。また、東ティモール国内で唯一、商用規模でバラと菊の生産に取り組んでいる「ニコラウ・ロバート研修センター」も訪れ、過去10年におよぶ東ティモールでの経験を聞かせていただきました。
朝4時から賑やかなインドネシアのBandugan花卉市場
研修センターにある耐久性の高いグリーンハウス
こうした視察調査を経て、花卉栽培がすでに盛んな隣国インドネシアでも減農薬・減化学肥料での栽培に取り組み始めていることや、インドネシア農業技師から化学肥料を使った花卉栽培の指導を受けていた「ニコラウ・ロバート研修センター」の東ティモール人技師たちが、化学肥料を使い続けることでコストがかかる上に土壌が肥沃ではなくなっていくことから、自分たちで有機たい肥をつくり、現在はできる限り有機栽培をおこなっていることなど、興味深い学びを得ることができました。
また、耐病性・耐暑性品種を保持しているインドネシアの農家さんから菊の苗を輸入する伝手ができ、2023年7月に試験的に5000株の苗を輸入する運びになりました。これに先駆け、「ニコラウ・ロバート研修センター」で女性たちへの研修をお願いしたところ、快く引き受けてくださり、5月に各グループの代表者たちが1週間の研修を受けました。
菊を長くまっすぐ育てるためのフラワーネットづくり
摘雷、葉を落とす作業
研修を終えて指導してくださったセンターの方と参加者とで記念撮影
視察調査から得た学びをもとに、女性たちとグリーンハウスの設置や土づくり、水やりに必要な農業用水の整備などを進めています。苗の輸入にあたって東ティモール農水省検疫局から許可を得るのに手間取ったり、乾季の強風でグリーンハウスのビニールが飛ばされたり、始まったばかりの花卉栽培はトラブルの連続ですが、忍耐強い女性たちと東ティモール産切り花を市場へ定期出荷するためのトライアンドエラーを続け、確実な収入につながるよう取り組んでいきます。
(東ティモール事務所 林 知美)
※この事業は外務省NGO連携無償資金の助成と皆さまからのご寄付により実施しています。