【2.13開催】<パレスチナ連続講座>第6回 ドイツとイスラエル―食と農の植民地主義研究を中心として
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2023年10月から1年3か月以上も続いたガザ地区へのイスラエル軍による無差別攻撃と軍事侵攻は、4万5,000人(イギリスの研究チームの調査によれば7万人とも)を超える市民の命を奪っただけでなく、住居、学校、病院など、あらゆるインフラを破壊しました。戦争以前はガザ全土の42%(15,053ヘクタール)を占めていた農耕地も約7割が破壊され、ガザ内での食料生産能力は著しく低下、そして封鎖下での厳しい物資の搬入制限により人為的に引き起こされた飢餓は、このままの状況が続けば2025年4月末までにガザの全住民の91%以上を急性食料不安(IPCフェーズ3)以上に陥れると危惧されています。欧州連合(EU)の外相も、飢餓を戦争の武器として利用しているとイスラエルを非難するほどです。
ヨルダン川西岸地区でもまた2023年10月以降、国際法違反とされる入植活動が急速に進められ、パレスチナの人びとから土地や資源を収奪し、一部の違法入植者たちによるオリーブの木への放火など、農地を破壊する襲撃も相次いでいます。
このような明らかな国際法の違反、ガザにおける戦争犯罪と人道に対する罪の疑いをかけられてもなおイスラエルが突き進む要因は、アメリカやドイツによる支援があるからにほかなりません。ドイツのショルツ首相は「イスラエルとその国民の安全はドイツの『国是』だ」と言いました。人権、人道主義を掲げてきたこれらの国々が、イスラエルに対しある意味盲目的ともいえる姿勢を貫くのはなぜなのでしょうか。
パレスチナ連続講座第6回は、ドイツ現代史、特に食と農の歴史がご専門の京都大学の藤原辰史先生にお話しを伺い、ドイツ現代史・ナチズムとイスラエルの関係、そしてパレスチナにおける食と農の暴力について考えます。
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藤原先生より
ナチスが、ソ連兵や中東欧の住民の餓死を3000万人想定して(飢餓計画)、ソ連と戦い始めたことはあまり知られていない。それは、ナチスが中東欧をドイツにとっての都合のよい経済圏に変えていく東部総合計画と並んで、ナチスの植民地主義的性質を映し出すものだった。帝政ドイツのアフリカでの虐殺を含め、以上のような歴史よりもユダヤ人の虐殺をイスラエルとの関係のなかで唯一無二の悪行と記憶してきたことが、今回のイスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイドに対しドイツが批判できない大きな理由のひとつとなっている。とともに、イスラエルの食と農を通じた植民地主義への無関心とも繋がっていると私は思う。本発表では、食と農の植民地主義という観点からドイツとイスラエルの現代史を概説的に捉え直してみたい。
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オンラインでの開催となります。どうぞお気軽にご参加ください。
開催概要
日時:2025年2月13日(水)19:00~20:30
場所:オンライン(ZOOM)
スピーカー:藤原辰史さん(京都大学人文科学研究所准教授)
参加費:①無料 ②パレスチナへの寄付つきチケット1口500円(2口以上のご寄付はチケットを複数枚お申込みください。)
*活動費にできるだけ多く回すため、今回の寄付つきチケットの寄付額については領収書をお送りしません。領収書が必要な方は、ご連絡ください。
お申込み:Peatixイベントページよりお申込みください。
https://parcic-palestine202502.peatix.com/
参加方法:お申込みいただいた方に、開催の3日前にZOOMのURLをご連絡します。
スピーカーのご紹介
藤原辰史(ふじはらたつし)さん(京都大学人文科学研究所准教授)
1976年生まれ。専門は農業史、食の思想史。生態系の中に組み込まれた人間の在り方から、現代史を再構築する試みを続けている。また、新聞・雑誌のコラムの連載や、「パンデミックを生きる指針」(B面の岩波新書、2020年)や『中学生から知りたいウクライナのこと』(ミシマ社、2021年)、『中学生から知りたいパレスチナのこと』(ミシマ社、2023年)など時事問題にも積極的に発言をしている。『分解の哲学』(青土社、2019年)でサントリー学芸賞、『給食の歴史』(岩波新書、2018年)で辻静雄食文化賞、『ナチスのキッチン』(共和国、2016年)で河合隼雄学芸賞、また、ナチスの食研究全般に対して日本学術振興会賞を受賞。他にも、『カブラの冬』『食べることとはどういうことか』『歴史の屑拾い』『植物考』など多数。