特定非営利活動法人 パルシック(PARCIC)

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10月7日以降のヨルダン川西岸地区の様子

  • 活動レポート

10月7日以降、ガザ地区だけではなく、パルシックが循環型社会作り事業を行っているヨルダン川西岸地区での状況も悪化しています。イスラエル軍による難民キャンプへの侵攻、C地区(地区については、こちらの記事を参照ください)では違法入植者のパレスチナ人への暴力による被害の拡大など、10月7日からの約1か月で2,500名以上の死傷者が報告されています(パレスチナ保健省による)。

循環型社会作り事業で農業専門家として活躍するサーデクは、パルシックや現地のNGOで技術指導をする傍ら、ヨルダン川西岸地区のセルフィート県マスハ村にある自身のオリーブ畑や果樹園で有機農業を実践しています。サーデクからヨルダン川西岸地区の人びとの生活、特に農業への影響について聞きました。

サーデクからの報告

セルフィート県を含む北部では10月中旬から11月にかけてグアバが収穫期を迎えます。しかし10月7日以降、イスラエル軍により西岸地区の至る所で道路が閉鎖されており、収穫した農産物を市場まで運ぶことができなくなっています。ナブルス県にある、一番近くの大きな市場にも輸送することができません。もちろん、より大きなラマッラ、ベツレヘムなどの西岸地区南部の市場にも出荷できなくなっています。その結果、通常であればグアバ1箱(約14kgくらい)を80シェケルで出荷できるところを、出荷先が限られている今、1箱5シェケルで販売せざるを得えません。1箱5シェケルでは出荷にかかる輸送費に相当するだけで、利益はもちろん生産にかかった費用も賄うことができません。

オリーブも収穫期を迎えています。しかし、分離壁(※)の近くにオリーブ畑を持つ農家は、オリーブを収穫することも難しくなっています。私の友人は分離壁の接したところにオリーブ畑を所有しています。彼はオリーブの収穫期が始まってから数日は収穫することができましたが、10月7日以降にオリーブ畑へ行ったところ、イスラエル軍に拘束されました。その時にはすぐに解放されましたが、イスラエル軍からオリーブ畑に近づかないように警告されたそうです。その後、自分の土地であるにも関わらずオリーブを収穫しに行くことができていません。西岸地区では収穫期を迎えているにも関わらず、オリーブ農家が自分の畑に近寄ることができないため合計約1.5平方キロメートル(テニスコート約5,752面分)のオリーブ畑が放置されています。

道路や検問所の封鎖は、農業だけではなく日常生活にも大きな影響を与えています。先日、地域の公共交通機関の運転手などから最新情報を確認しながら、自宅から事業地ナブルス県の北アシーラに行きました。行きは問題なく事業地に着くことができましたが、帰路はイスラエル軍によって突然、至る所で道路が封鎖されたため、迂回する必要がありました。通常であれば1時間かからないほどの道のりですが、帰りは2時間以上かかりました。また、大学は基本的にはオンライン授業に切り替わっていますが、私の娘は医学生で、今はセルフィート県内にある病院で研修を受けています。家から病院までの間の道路をイスラエル軍が封鎖しており、通常よりかなり遠回りをしないと病院に通えません。都市間を結ぶ主要な道路が封鎖されており、日常的に通院が必要な腎臓透析患者が通院を控えざるを得なくなっていたり、急病やけが人が出たなどの緊急時に救急車を使って病院への搬送ができなくなったりと、命に係わる問題も出ています。

※2002年以降、イスラエルによってイスラエル市民とパレスチナ市民を分断する分離壁が建設されました。ヨルダン川西岸地区の領域に大きく食い込む形で、西岸地区とイスラエルおよびエルサレムの間に8メートルから12メートルにもなる壁が建設され、西岸に住むパレスチナ人は許可証がないと東エルサレムやイスラエル側に行くことができなくなりました。また、分離壁によってイスラエル側と西岸側に分断されてしまった村もあります。現在でも建設は続いています。

占領によって日々、人権が侵害され続けている

イスラエルによる検問所や道路の封鎖、違法入植者による攻撃は、107日以降にはじまったわけではありません。ガザのように全域を大規模な空爆で破壊されることはありませんが、占領によって日々、人権が侵害され続けています。

ヨルダン川西岸地区は統治権によってA地区、B地区、C地区に分けられています。A地区、B地区はC地区に囲まれた小島のようになっています。普段からC地区を通り抜けるには検問所を通過する必要がありますが、10月7日以降はA地区にある村の入り口をイスラエル軍が封鎖するということが各地で起きています。

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堆肥試験用温室にて、右がサーデク、左はオリーブ農家。生ごみを利用して作った有機堆肥を、実際に作物を育てるのに使って品質の確認をしています

パレスチナ事務所

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